SaaSのプライシング戦略はなぜ重要?プロセスや考え方を徹底解説!
SaaSビジネスにおけるプライシング戦略の有効性は国内外で広く評価されています。本記事では、昨今注目を集めるプライシング戦略の重要性について解説するとともに、SaaS企業で今すぐに活用できる採用プロセスや考え方を解説していきます。
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SaaSとは?
SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをインターネットを通して利用できるサービスです。
インターネットがあればどこでも利用できる点、複数人でファイルなどを管理できる点が特徴です。
SaaSビジネスの特徴
SaaSビジネスは、サブスクリプション型が一般的です。
クライアントの要望に合わせてサービスを拡大して、継続利用をとったり、SaaSの利用者を増やしたりすることで事業を拡大するビジネスモデルです。
まず押さえたい!SaaSマーケティング用語50選
SaaSのビジネスを拡大するうえで、BtoBマーケティングの実践は欠かせません。
一方で、SaaSやBtoBマーケティングの領域には専門用語も多く、
これから本格的に活動を進める方にとって、その理解に苦労することとなるでしょう。
こちらの資料では、SaaSに関連するマーケティングのうち、
押さえておきたい用語を50個ご紹介しています。
SaaSでプライシング戦略が重要とされている理由
プライシングとは、サービスの価格や提供体系の決定に関する作業全般を指し、全てのビジネスにおいて必要なプロセスです。
特に近年では、SaaSビジネスにおいてプライシングがもたらす効果の大きさが確認されていることを受け、綿密で最適なプライシングモデルの構築が、経営戦略の一環として重要視する傾向が強まっています。
プライシングがSaaSビジネスにもたらす効果とは、どのようなものがあるのでしょうか。
ユニットエコノミクスが改善される
ユニットエコノミクスは、その名の通り、1ユニットあたりの経済性(採算性)を示す指標で、BtoBであれば1ユニット=1企業、サービスや製品によっては、1ユニット=1アカウントまたは1顧客と考えることが一般的です。
主にサブスクリプション型ビジネスモデルを採用している企業において、営業やマーケティングコストの適正性を測るために使用され、近年のSaaSビジネスの台頭に伴い注目を集めています。
ユニットエコノミストの算出に用いられる指標は以下の2つです。
LTV |
1人の顧客が生涯かけてその企業に寄与する価値 |
CAC |
顧客1人を獲得するために要した営業・マーケティングのトータルコスト |
適切なプライシングは、このLTV、CACの双方に対してポジティブな効果をもたらすことから、総じてユニットエコノミクスに対しても高い改善効果を生み出します。
サービスの価格改定を頻繁に、かつ継続的に見直している企業のユニットエコノミクスは、見直しを行わない企業のそれが1.7であるのに対し、11.1と大きな差が生じるという調査結果もあるほどです。
利益率が上昇する
利益率においても、適正なプライシングモデルの活用は大きな効果をもたらします。
1%のプライシング改善施策により、利益率が12%改善するとされ、解約率(6.7%改善)や新規顧客獲得(3.3%改善)の施策と比較しても、利益率の最大化に対し圧倒的な貢献度の高さを見て取ることができます。
このようにプライシングには、SaaS企業の収益構造に深く関与するポテンシャルがあることがわかります。
ROIへの視線が厳しい投資家を抱えるSaaS企業にとってプライシング戦略は、収益性を高める最適な施策として評価され、重要な経営戦略として取り入れられるに至ったのです。
SaaSでバリューベースプライシングが採用されている理由
数々のプライシングモデルが存在する中で、多くのSaaS企業がバリューベースプライシングモデルを採用しています。
その背景には、「収益の最大化」と「TAMの拡大」という二つの理由が考えられます。
収益の最大化
バリューベースプライシングによる価格設定の指標となるのは、「顧客の支払い意欲」です。
顧客がその価格とサービス内容に価値を見出し、納得をして費用を払うのであれば、その意欲の上昇に比例するかたちで、より高い価格を設定することができます。
そのため、顧客の意欲を高い水準で維持することで、価格改定やアップセル・クロスセルによる追加購入に対しても、ロイヤリティを低下させることなく収益を高めていくことが可能となるのです。
TAMの拡大
SaaSビジネスにおけるTAM(Total Addressable Market)の拡大のためには、その算出に用いられる「マーケット全体の顧客数」か「課金額」のどちらかの数値が向上しなくてはなりません
顧客に提供する価値を指標とした従量課金方式を採用することができれば、顧客への課金金額の上限は無くなり、TAMは拡大を続けることができるのです。
近年、この上限の無い従量課金モデルを導入したSaaS企業において、上位顧客が売上の大半を生み出す「2:8の法則」に近い現象が見受けられるケースも少なくありません。
現にチャットツールのSlackでは、課金額上位0.8%のユーザーが売上全体の46%を、ゲーム開発プラットフォームのUnityでは、上位0.7%のユーザーが全体売上の74%を生み出しているのです。
SaaSのプライシング戦略のポイント
SaaSのプライシング戦略において、適正価格に絶対的な正解を求めることは、大変困難なことです。
変わり続ける市場を注視すると共に、顧客のニーズや競合他社の動向などに目を光らせ、常に価格や課金方法の最適解を考え続けることが大切です。
ここからは、戦略策定における要とも言える価格設定において必要な「事業者視点」「顧客視点」「第三者(市場)視点」の3つの観点からのアプローチを解説していきます。
この価格で利益は出るか
いくら顧客からの評価が高くとも、利益を生まなければプライシングは失敗であると言えます。
しかし、SaaSの一般的なビジネスモデルは、リカーリングビジネスであるため、ローンチ早々に高収益や投資回収を達成することに躍起になる必要はありません。
一時的な収益悪化を乗り越えて、顧客を増やしAPRを増やし、数年単位で投資回収を達成する事業計画がSaaSビジネスにおいては一般的です。
にもかかわらず、利益追求に偏りすぎたプライシングモデルを採用してしまうと、チャーンリスクも高まり、新規顧客獲得もままならない状態に陥りかねません。
事業者視点で「利益の出る価格設定」を検証する際は、中長期的な収支計画をしっかりと策定し、現時点で必要な利益ラインを明確に定めた上で設定価格の検証に進むというプロセスが必要なのです。
この価格で契約したいと思うか
顧客視点で設定価格を検証する際に重要なポイントは、「いかに顧客の納得感を強めることができるか」に尽きます。
ここでは、綿密なマーケティング戦略が大きく関与してきます。
提示価格に対する顧客の納得感を高めるためには、顧客がそのサービスを導入した際に得られる効果を具体的にイメージできなければなりません。
そのため、定量的なデータ収集から導入効果を示した顧客事例や、導入しなかった場合にはどのくらいのコストが考えられるのかなど、現状と導入後を上手く比較する見せ方が重要となってきます。
加えて、詳細な顧客分析を活用してプランのカスタマイズ性を高めることもひとつの手法として効果が期待できます。
いずれにせよ、どのような状況においても顧客が納得のいく「裏付け」を以ってそのサービスの価値を顧客に説明できるような準備は不可欠です。
また、顧客の意思決定に必要と考えられる要因を分析し、購入意欲を喚起するために必要な情報の収集を継続的に行うことも、プライシング戦略において重要なポイントなのです。
市場適正価格か
事業者と顧客の双方にとって適正な価格レンジが定まったら、最後に第三者的な視点でその価格を検証しましょう。
事業者と顧客、どちらかに偏った価格設定になっていないかの確認はもちろん、競合他社と比較した際、他者と差別化する上での付加価値が反映されていることも重要な検証ポイントです。
プライシングにおいて、競合他社との比較は不可欠ですが、ここで機能と価格の2つの視点でのみ比較してしまうことは、戦略失敗における代表的なパターンです。
サブスクリプション型SaaSのビジネスモデルにおける収益構造は、顧客の価値指標によるところが大きいからこそ、プライシング戦略が功を奏すという点を忘れてはいけません。
サービスが顧客に提供する価値とは、UIの利便性や動作速度、メンテナンスの頻度やセキュリティなどの様々な要因が複合的に織りなすものです。
そのため、単なるパッケージングされている機能と価格だけではなく、多角的に自社のサービスを分析して、市場における適正価格か否かを検討することが重要なのです。
ただし、プライシングの前提条件となる市場におけるポジショニングの適正については厳しく吟味しておきましょう。
ここを見誤ると、誤った前提条件の元でプライシングが進んでしまうため、要注意ポイントです。
プライシングのモデル手法
ここからは、数あるプライシング手法の中でも、SaaSビジネスと親和性の高い、戦略策定に活用できる4つのモデル手法について解説していきます。
Industry Benchmarks
顧客規模に応じてベンチマークとなるSaaS企業を設定し、それぞれのスケール毎の価格体系がどのようなものかというデータを参考にしてプライシングする手法です。
この手法は、あくまで大枠のプライシングしかできないため、精度自体は低くなります。
Competitive Analysis
この手法では、顧客のお財布事情を鑑みプライシングを行います。
顧客の予算を把握し、競合のサービスがすでに占めている割合と、これから自社が入り込める余白の大きさをベースに適正価格を考えていきます。
EVC Analysis
EVCとは、Economic Value to the Customerの略で、自社のサービスと比較検討される競合のサービスとの間にある、価値と価格の差分という視点からプライシングを行う手法です。
競合サービスとの差別化要因を価格に反映させるEVCは、近年のSaaSのプライシング戦略において重要性を増しています。
Market Research
様々な統計データを分析した結果を元にプライシングを行う手法です。
この手法は、分析精度を上げるために膨大な量のデータが必要となることが大きなデメリットとなっています。
ただし、その分母の大きさから過去の価格データや、価格に関するヒアリングによるデータの量が多いBtoC SaaSであれば、この手法も効果が期待できます。
SaaSのプライシング戦略のプロセス
ここからは、プライシング戦略策定の具体的な方法を、各プロセスごとの押さえておくべきポイントとともに、順を追って解説していきます。
体制を構築する
プライシングは事業の行く末、ひいては企業の収益を左右する要因であるため、その波及範囲も社内の広くにまで及びます。
そのため、戦略の策定には、社内横断型で関連する複数の部署や関係者と連携してひとつのプロジェクトとして進めなければ、戦略が成功する可能性は大幅に低くなります。
プライシング戦略の推進体制の構築は、戦略策定から実行までの全てのプロセスを通じて、成功を左右する要となってきます。
重要なチーム編成に際しては、以下のような役割を考慮した上でメンバー選定を進めるとよいでしょう。
役職 |
対象 |
役割 |
オーナー |
経営層(CEOや取締役) |
価格変更における目的設定・最終意思決定 |
リーダー |
経営企画担当または事業責任者 |
各所・各担当者との調整 |
プレイヤー |
プライシングに必要な実務作業を日常業務行っている人 |
必要なデータの収集や分析などの実務 |
価格体系を考える
SaaSのプライシング戦略において基本となるのは、「誰に何を届けるか」と「何にいくら請求するか」の2つの観点から戦略を進めていくことです。
このプロセスではまず、2つの観点のうち「何にいくら請求するか」にあたる、価格体系と金額を設定していきます。
ここでは代表的な価格体系(=課金モデル)4つについて、それぞれの特徴をあげていきます。
定額課金モデル |
・定期的・安定的な収益が発生 ・顧客にとってわかりやすい課金方式 ・多様なニーズに応える工夫が必要 |
アカウント別従量課金モデル |
・アカウント数の増加に比例して利用ユーザーが増え単価が向上 ・ユーザーが複数であることが前提 |
利用別従量課金モデル |
・利用料毎に料金が発生 ・利用すればするほど単価が向上 ・利用を控えるリスクがある |
機能別従量課金モデル |
・利用ニーズ、顧客ニーズに合わせたプラン設計 ・プラン変更によるアップセルが見込める |
適正な課金モデルを検証するプロセスにおいては、顧客セグメントと提供価値の整理も進めていき、「誰に何を届けるか」の部分を明確にしていきます。
顧客セグメントとそれぞれに提供する価値を紐付けた後、先ほどの課金モデルから最適なものをさらに紐付けていきます。
そして最後に、顧客分類>価値分類>課金モデル分類の3つの要素のつながり方を元に、自社サービスに対して最適な価格体系を設定すれば完成です。
適正価格を算出する
価格体系が設定できたら、次は、実際に顧客に支払ってもらう具体的な金額を算定するプロセスへと移行します。
金額の算定において活用される代表的な手法は3つがあげられます。
PMS分析(価格感応度分析)
顧客の支払い意欲を調査する際によく用いられる方法で、アンケートを通じてデータを収集し、その結果をもとに多角的に分析を行い、最適価格を見つけ出す流れが一般的です。
アンケートでは「高い(または安い)と感じ始める金額」や「これ以上高い(または安い)と検討にのらない金額」などの質問に顧客は答えていきます。
ここで間接的な質問をいくつかすることにより、バイアスの影響を最小限に支払い意欲を測定することができるのです。
PMS分析は、最も顧客に受け入れられる価格レンジを把握することができるため、売上をどこまで最大化できるかの資産にも効果を発揮します。
また、汎用性が高く、結果の精度も高い手法であることから、SaaSのプライシング戦略においても多く採用されています。
EVC Analysis
プライシング戦略全体においても有効性の高い指標であるEVCは、以下のような方法で算出されます。
EVC=参照(競合)サービスの価格 + 自社サービスの付加価値(TAV)
ただし実際の販売価格はEVCに割引を施した額となります。
この割引額の決定は非常に困難で、顧客の価格感や心理的要素などの100%数値化できない指標も勘案して決定されます。
そのことから、EVCを活用したプライシングモデルは、最終的には経験や勘に依るところが大きいアート的な手法であるという声も少なくありません。
Split Testing Pricing
サービスにおける様々な変更に対して顧客がどのような反応を見せるかを測るスプリットテストを用いて、最適な顧客体験の設計に有効な手法です。
主にマーケティング戦略の一環としてHP作成に用いられる手法をプライシングに応用して活用するため、料金表をHP上に公開することを前提に、表示された価格の変化から購入数や収益の変化を測ります。
ただし、ページ上での価格表示法をデザインすることは、フロントエンドに変化を加えるより難易度が高く、顧客間のトラブルや、最悪法律違反となることもあるため、慎重に進める必要があります。
顧客に連絡をする
顧客は価格変更に対して、あまりポジティブな印象を抱かないでしょう。
そのため、このプロセスにおいて最も重要なミッションは、顧客が抱くネガティブな印象を最小化することです。
一般的にはHP上でメッセージを公開するか、メルマガを利用して顧客に知らせますが、その際におさえておくべき重要なポイントがあります。
それは、価格変更は自社の利益追求ではなく、顧客にとってより良い体験・価値を提供するために必要なことであるというメッセージを、しっかりと伝えることです。
企業側の熱くエモーショナルな想いを伝えることが、顧客のネガティブな印象を最小化するには最も効果的に働くのです。
加えて、既存顧客と新規顧客を差別化して対応することも、価格変更によるチャーンへの影響を含め最小化してくれるでしょう。
具体的な方法としては、新規顧客から変更価格を適応する、既存顧客には一定期間空けてから変更を適応するなどがあげられます。
また、CSや営業担当者が顧客先に説明に赴くことも誠意ある印象を与え効果的です。
EVCはなぜ必要なのか
EVCを用いたプライシング戦略は新規顧客に対するアプローチに適しているというイメージが強い一方で、既存顧客に対しても有効に働くことがわかっています。
営業力が向上する
EVCにより、様々な仮説を立てて適正価格を評価することにより、サービスの価格を裏付ける具体的な要因が浮き彫りになってきます。
顧客が得られるであろう効果や競合他社のサービスと差別化する要因などを具体的に説明・提案ができるようになることで、営業のクロージング率が向上するというメリットが生まれるのです。
顧客のセグメントができる
EVCにより、顧客のセグメントが適正かどうかを見直すこともできます。
セグメントの適正化を検証することで、正しいセグメントがわかるだけでなく、より高い売上が見込めるセグメントやアプローチを避けた方がいいセグメントが可視化されるのです。
コホート分析に活用できる
様々な指標毎にユーザーをグループ化して行動を分析するコホート分析においても、EVCは大いに活用することが期待できます。
価格体系などEVCの分析結果に基づきコホートを分類することで、顧客毎のKPI設定などにおいて、新たな指標での行動分析が可能となります。
課金方式を見極められる
日本では定額課金型SaaSが多い一方で、世界規模でみれば従量課金モデルを選ぶSaaSは増加傾向にあります。
先述の通り、課金方式にはそれぞれのメリット・デメリットが存在し、適した顧客セグメントや事業のフェーズも異なります。
そのため、EVC分析により他社と差別化する上での付加価値となる要因を洗い出すプロセスを設けることにより、現時点での最適な課金方式を見つける手がかりとなるのです。
SaaSの価格を見直すタイミング
市場における適正価格とは、常に変化し続けるため、一度設定した価格が未来永劫顧客や市場に適したものであるという保証はありません。
米国SaaSスタートアップの約80%は、年に1回以上の価格の見直しを行っているとの調査結果もあり、最低でも年に1回の頻度での見直しはSaaS企業にとってマスト事項であると言えるでしょう。
ここからは、具体的に見直しを行うべきタイミングについて4つの代表的な例を解説していきます。
事業フェーズが変化した
事業フェーズの変化は、プライシングモデルを含む戦略全体を大きく見直す重要なポイントです。
事業フェーズは、プレシードからシード期にあたる「立ち上げ期」、シリーズAからBの「成長期」、そしてシリーズC以降の「安定期」の3段階で変化していきます。
そのため、各フェーズにおいて適正なプライシング戦略を策定し、見直すタイミングを見計らいながら戦略を講じていかなければなりません。
ます、立ち上げ期においては、まずは第一顧客セグメントに対してもれなく価値提供ができる体制づくりを最優先事項としなければなりません。
そのため、複雑な価格体系は不要で、価格も最低限に設定し、とにかくシンプルなプライシング戦略で売りまくることが重要です。
次の成長期に移行したタイミングで、本格的なプライシング戦略に練り直します。
このフェースでは、顧客セグメントも複数になり多様化が進み、プライシングがもたらす効果が様々なかたちで見えてきます。
例えば、大きな売上が期待できる顧客に対しても、最低限の価格、一律の価格体系で販売することで生まれる機会ロスも散見されるようになるのです。
そのため、このフェーズに移行するタイミングで、前期に設定した価格体系を見直し、より幅広いセグメントのニーズに応えられるプライシング戦略への見直しを実施しましょう。
売上目標を引き上げた
SaaS企業の多くはスタートアップで、さらにその大半が投資回収とシェア拡大のために、常に売上目標や目標成長率を達成し続けなければならない状況にあります。
新規顧客の獲得ペースが鈍化したタイミング、または顧客獲得ペースに対し売上の伸び率が悪いなど、目標達成が難しいと感じた際もプライシングを見直すタイミングです。
価格が向上した
新機能が追加されることで、顧客へ提供する価値は向上します。
提供価値が向上するに比例して、現状の価格とあるべき価格の間に変更余地が生まれてきます。
このタイミングでこまめに価格体系の見直しを行っている企業とそうでない企業とでは、その収益に大きな差が生まれることは、冒頭で紹介した調査結果からも明らかです。
新たな機能の追加やサービスの拡充においては、その変化によって価格にどれくらいのインパクトを及ぼすかを検証するプロセスを組み込みましょう。
ターゲットを変更した
ターゲットがSMBであるのとエンタープライズであるのとでは、講ずるべき適正なプライシング戦略は全く異なった内容となってきます。
そこまでの大々的なターゲット変更でないとしても、顧客セグメントの複数化・多様化やEVCによるセグメント見直しなど、ターゲットが変化するタイミングは様々です。
そのため、変更の都度、戦略を見直し、プライシングがきちんと効果を生み出しているかを検証し、適宜修正を施すPDCAサイクルを戦略策定のプロセスに組み込むことが重要なのです。
米国では、値上げ・専門家の存在も一般的
米国のSaaS企業では、値上げが一般的に行われており、それをサポートする専門家がついていることもあります。
米国での値上げ
米国では、SaaSのサービスの質を上げて、EVCを上昇させるために開発チームなどを強化しています。
その結果SaaSの値上げが行われています。
この循環を繰り返しているため、米国では値上げが一般的であり、その前提のもと営業や交渉が行われているのです。
専門家の存在
SaaSの性能を高めて価格をあげる、という流れが一般的な米国では、EVCの専門家の存在も一般的です。
過去の事例をもとに今後のクロージングを考察し、戦略を立てていくような役割を果たしています。
SaaSのプライシングをマスターしよう!
SaaSビジネスにおいて、優良な顧客体験の提供と利益向上の双方を達成するためには、プライシング戦略が不可欠です。
プライシング戦略は、その策によっては顧客との信頼関係が失われるリスクがある一方で、さらに顧客との関係性を強化するという表裏一体の効果をもった取り組みです。
このリスクを最小化し、メリットを最大化するためには、SaaSプライシングへの理解を深め、適切な手法を用いた戦略を策定しなければなりません。
そのためにも、プライシングのスキルとノウハウを磨いていくことが重要なのです。
SaaS企業の集客ならBOXIL
今回の記事では、SaaSプライシング戦略についてをご紹介させて頂きましたが、BOXILではプライシング戦略だけでなく、SaaS企業の課題に関する様々な悩みを解決できます。
まずは、実際の費用や活用事例をこちらからご確認下さい。